NGT事件に見る「未成熟な集団」の論理


たまには時事ネタなど。今回は巷を騒がせているNGT48の事件について書きたいと思います。 なお、今回扱うのは暴行事件そのものではなく、運営サイドが取ったその後の「隠蔽問題」についてです。

正直なところ私は業界関係者でも何でもありませんので、報道されている以上の情報を持っているわけではありません。 しかし、今までいくつかの団体を運営してきた経験から、今回の隠蔽問題が「未成熟な集団」で発生する事象そのものであるように感じられたため、 過去の経験を共有する意味で一筆とることにしました。

「未成熟な集団」では何が起きるか?

「未成熟な集団」とは、運営指針となる定款が曖昧だったり、指揮命令系統が確立されていないなど、「なあなあ」で運営されてきた集団のことを指します。 近隣に住む人同士や趣味の合う人たちが寄り添って作った、いわゆる仲良しグループに多く見られる状態です。

未成熟な集団は、通常時は上手く運営されているように見えます。 しかし、ひとたび問題事が起きると定款や指揮命令系統の曖昧さが原因で、一部の声が大きい人たちの(多くの場合、独善的な)意向が強く反映されてしまい、 問題解決に当たって不公平な対応が行われてしまうことがあります。例えば、下記のようなものです。

① 被害者を黙らせようとする

問題事というのは、大衆の面前で発生した場合を除き、被害者が被害を申告した時点で初めて問題として認識されるものです。 よって最も簡単で、そして最も冷酷な問題の解決方法は、被害者を黙らせることになります。

今回のNGT事件では、被害者の女性が「被害妄想」などという言葉で責められ、問題を公にしないよう迫られたと報道されています。 名指しで非難された「支配人」なる人物は、おそらく最も簡単な方法でこの問題を対処しようとしたのでしょう。 しかしそれは被害者にすべての問題を押し付け、泣き寝入りを強いる最も冷酷な方法であると言わざるを得ません。

被害者は、自分では解決できない問題だからこそ人を頼って被害を打ち明けるのです。 それなのに、まるで被害の事実そのものを否定するような言動を行われては、被害者から見たら切り捨てられたと感じても仕方がないでしょう。

② 問題を持ち込んだことを非難する

被害そのものは否定しないまでも、被害を申告したことを責められることがあります。 つまり「問題が起きたことは分かったが、それは個人の問題だから集団には持ち込まず当事者間で解決してくれ」というものです。 もっとひどい場合は「あなたはなぜ個人の問題を集団に持ち込むのか」など、被害を訴えたこと自体を非難されることもあります。

「個人の問題」というのは非常に便利な言葉です。人の集団で発生する問題というのは、突き詰めればたいていは人対人の問題となります。 今回のNGT事件でも、「自宅で発生した事件だから個人のセキュリティ管理が問題」とか「一部のメンバーが関与したとしてもそれは当事者のメンバー同士で解決すべき」など、 いくらでも「個人の問題」として強弁することが出来てしまいます。

しかし、それは関係者たちが自分に問題が振りかかるのを嫌っただけの事であり、被害者に全ての問題を押し付けるという点では被害者を黙らせるのと同じことになります。

③「両成敗」で被害者まで追放しようとする

日本では「喧嘩両成敗」が重視され、争い事が起きるとしばしば当事者の両方を処分しようとします。 もちろん互いに非があって争いが起きたならばそれで構わないのですが、一方的に被害にあった人が少しでも反撃を行うと、 そのことに対して「両成敗」が持ち出され、被害者までもが追放されてしまうことがあります。 例えば「加害者に非があるのは間違いないが、あなた(被害者)も突然の訴えで混乱を招いた責任がある」という論調です。

このような(無理のある)両成敗が行われるのは、問題事の原因である当事者を遠ざけたいという意図が働くためでしょう。 加害者・被害者がどちらもいなくなれば、その集団内では問題事に対して一応の幕引きを行うことが出来ます。 しかし、これもまた被害者に問題を押し付けただけに過ぎないことは言うまでもありません。

成熟した集団になるにはどうした良いか?

未成熟な集団で起きる対応のまずさは、そのほとんどが「事なかれ主義」を発端としています。 被害者を黙らせるのはその典型で、被害が無かったことになれば問題自体も無かったことになるという安直な(そして他人の痛みを理解できない冷酷な)発想が根本にあります。

成熟した集団になるためには、何よりもまず「事実」を重視することです。 被害者の話を聞き、しかしそれを鵜呑みにはせず他の人からも情報を集め、最終的に導き出された結果がいかに都合の悪いものであったとしても、 事実は事実として認める度量が必要となります。

今回のNGTにおける隠蔽問題は、おそらくスポンサーに対するイメージを気にしたものか、 あるいは一部の(事件に関与したと言われている)メンバーを守る何らかの理由があったか、 そういった「都合の悪い」理由があったために引き起こされたものと思われます。

名指しで非難された「支配人」なる人物は、自分にとって都合の悪い事実が出てしまった問題を隠蔽すると決め、それを行動に移したのでしょう。 その結果、真面目に活動していた一人のメンバーが全ての問題を背負い込むことになり、 ついに耐え切れなくなって生配信で被害を申告するという異常な事態を引き起こしたものと考えます。

成熟した集団とは「真面目な人が損をしない集団」

事実を事実として認定するということは、嘘をつかずに真面目に活動している人を守ることでもあります。 真面目に活動するということは、面倒事が増え、周囲からは鬱陶しく感じられる事もあるかもしれません。 しかし、義務を果たさず自分がやりたい事だけやる人が得をして、真面目に義務を果たす人が損をすることがあってはなりません。

「真面目にやる方が悪いの? 恋愛してる方が正義なの? なんで真面目にやってる人がこんな目にあうのか分かんない」

被害者のメンバーはTwitterでこのように訴えていました。

なお、ネット上に書かれたコメントを見ると、NGT自体が解散した方が良いという意見も出てきています。 しかし、上にも書いたように「両成敗」で被害者までが追放されるような対応は行うべきではありません。 処罰されるべきは加害者であり、加害者をそそのかしたとされるメンバーであり、この問題を隠蔽しようとした運営サイドでなくてはなりません。

もし運営サイドがNGTの解散で問題を収束しようと考えているのであれば、それは単に都合の悪いものを自分から遠ざけただけの事であり、 成熟した対応からはほど遠いものだということも付記しておきたいと思います。


宮野 清隆株式会社シスデイズ代表取締役社長
プロジェクトマネージャ・アプリケーションエンジニア・テクニカルエンジニアなど、
多数の高度情報処理資格を保有するITのスペシャリスト。2008年にシスデイズを設立し、代表に就任。
2012年より上位2%のIQを保有するものだけが参加できる団体「JAPAN MENSA」に所属。
2014年よりJAPAN MENSA財務担当、2016年よりJAPAN MENSA副会長に就任。
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